「ウレシイコト」を増やすには |
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人の「しぐさ」に励まされる、ということが私には多い。 ここダーバンでも私はNHKの朝の連続ドラマを毎日楽しみに見ているのだが、この番組が放送されるのが、こちらの朝の5時45分から。日本の昼の再放送の時間帯だと思う。 このドラマのあと、男性のアナウンサーが「一時になりました、ニュースをお伝えします」と言って、お昼のニュースを報道する。 その前、ほんの一瞬、彼の視線が下から上にあがってくる。その時、唇の在り方や目の雰囲気、頬の動きから、「ああ、この人も連続ドラマを見ていたな」ということが見て取れる。もちろん、彼がそこの席であの15分のドラマを全部見ていた、ということはないのかもしれない。でも、確実にドラマの筋を追っている、と分かるのは、彼の表情がドラマの流れによって、弱冠、曇ったり、明るくなったりするからだ。 でも、その、ほんの数秒の表情で、このアナウンサーと私のいる距離が吹っ飛ぶ。 「ふふふ、あなたも見ているのね」 という親近感。 米国での学生生活を終えたあと、東京のテレビ制作会社に数カ月ほど勤めたことがある。もともと教育関係の勉強をしていた私にとって、ここでの仕事は驚くことばかりだった。どんな番組を作っていたか、というと、この会社は、米国の公共放送向けに、日本の文化などの紹介する短い番組を制作していた。 櫻井よしこさんや幸田シャーミンさんなどがナレーターとして番組に登場していた。まだ櫻井さんが夜のニュースキャスターを始めたころだった。 テレビ番組の制作、というまったく路線の違う仕事はおもしろかったけれど、働く時間帯やら人間関係やらが私には馴染めなく、立派な名刺を作ってもらったのにも関わらずわずか数カ月で退職させてもらった。 でも、そのときの経験から、私はとっても大切なことを学ばせてもらった。 それは、一見、ものすごく「くだらない」と思えるような番組であっても、そこには、多くの黙々と働くたくさんの人がいる、ということ。 テレビ番組制作というものが、あれだけ大掛かりなものである、と知ったのはここでの仕事を経験したからだった。 南アフリカにいながら、衛星放送を通して日本のNHKが見られる、という時代を本当にありがたく思う。ニュースは同時に、連続テレビドラマも、大河ドラマも放送してくれる。そんな中、たまに目にする番組の「視聴率」だの、「評判」だのについたものを読んでみると、結構多くの人が、番組のことを最初の数回で、「これはおもしろくない」とか、「前作の方がよかった」などというネガティブな反応をしていることにびっくりする。 私には、「つばさ」も「天地人」も、とっても、とっても楽しかった。 私は英語と日本語の教師だから、その教授法とか、教え方、生徒への接し方などには確かにウルサイし、日本中を敵に回してケンカしていたような時期もある。 それから、人権とか、人種差別に関してウルサイ。これは子どもでも許さない。メディアに現れる文章にそういったことが気になると、きちんと文章で抗議するのも私です。 批評眼を持つことは良いこと。 どうしてかな?どうしてこうなるのかな?と考えるのはとっても健康的なこと。 でも、最初から否定的な見方をするのはもったいない、と思う。 自分の仕事とか、作業に力が入るのは当然のこと。でも、それ以外、そう自分の中で重要性の高くないものに対しては、ハードルの高さを下げていいんじゃないか、と私は思う。 そうすると、自然に「ウレシイコト」が増えてくるような気がする。 私にとって、毎日連続ドラマが見られることも、「ウレシイコト」のひとつなのだ。それに、登場する主人公たちの日常風景や考え方は、アフリカにいる私にとって、現在の日本を知る大切な情報源でもある。 それに、NHKの連続ドラマの、あの一回15分という長さも、いつでも忙しい私にぴったりの長さ。 だから、連続ドラマの半年の期間が終わって、次のシリーズに移ると、最初の1週間は「さびしいなぁ」と感傷にふけってしまう。半年かけて家族のように追ってきたドラマの主人公たちが一遍に変わってしまうからだ。でも、それも週を追うごと、新しいドラマに馴染んでいくようになる。 そして、その新しい主人公たちの応援団となる。 私は、若いころから日本を離れて生活しているくせに、日本人の優しさ、とか律義さとかが大好きなんだと思う。NHKのドラマにはそんな日本人がたくさん出てくる。もちろん、現実の日本は世知辛いことも増えてきているし、アフリカで生きることを選択した私には、信じられないような日本のニュースが流れてくることもある。 だからこそ、ドラマの中で繰り広げられる優しい、律義な日本人の物語が単純に嬉しいのだ。 そして、そのドラマを見守っているような「しぐさ」を、ニュースを読む前のアナウンサーに見ることは、私に不思議な連帯感を運んできてくれるのだ。 こんなことも私の「ウレシイコト」で、テレビを見ながら、「さあ、今日もがんばるぞ〜」と、思うのだ。 |
author : y-mineko
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