ノブシュレ・ダドゥラという女性 | 空の続きはアフリカ
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ノブシュレ・ダドゥラという女性

【2013.08.21 Wednesday 21:02

目の前に子犬がいて、そして悲しそうな目をしていたら、あなたはどうしますか。
目の前に子猫がいて、そしてあなたを見上げたら、あなたはどうしますか。
目の前に子どもがいて、あなたの手の届くようなところで転んだら、あなたはどうしますか。
目の前に鉢があって、とっても乾いた土から何かの芽がでていたら、あなたはどうしますか。
目の前に寂しさにふるえている友達がいたら、あなたはどうしますか。
目の前に自分の愛する人がいて、その人が泣いていたら、あなたはどうしますか。
目の前にお腹のすいている人がいて、そしてあなたが食べ物を持っていたら、どうしますか。

ノブシュレにとって、彼女の目の前にいた、精神疾病のあるホームレスの人たちは、誰に助けを求めたらいいかもわからない人たちで、彼女は“何か”をせずにはいられなかったのだそうです。

ノブシュレ・ダドゥラは、ハマースデールというダーバンから40キロほど離れた小さな村の出身です。彼女は独身で37歳。結婚したこともなければ、自分の子どももいません。これは、この地域では珍しいことなのです。

彼女は今、7名のスタッフと共に、ハマースデールの丘の上にある、町から無料で貸してもらっている古い建物で、71名のホームレスの精神疾患のある患者さんたちの面倒をみています。

毎日の生活は毎日同じように続きます。
朝起きて、まずは患者さんたちの様子を見回ります。
粗相をしている人がいれば、シーツを取替え着替えをさせます。
朝ごはんは二切れの食パンと、甘い紅茶。
昼間はスタッフたちと一緒に掃除、そして洗濯の大仕事。

そんな仕事をしているうちにすぐに昼ごはんになります。昼ごはんはメインの食事なので、毎日何らかのたんぱく質が患者さんたちに提供できるように努力しているそうです。

私が何回か訪問したときのお昼はでも、お肉らしきものは何も入っていませんでした。でも、お昼はお米の上になんらかのソースがかかっているご馳走です。

ノブシュレの仕事は、こういった毎日繰り返される暮らしをお金の心配をしながらこなしているのです。

どうやら、食料の大半はダーバン近辺のスーパーマーケットが、期限切れに近いものやへっこんだ缶詰などを寄付してくれたり、教会関係の寄付であったりするようです。しかし、71名の患者さんを面倒みる、ということは毎日の洗濯に必要な洗剤も必要でしょう、建物は無償で借りているとはいえ、電気代、水道代だってかかります。

また、南アでは、貧しい層であると、医療費は無料で受けられる制度があるのですが、その病院に連れていくためには、車を走らせるガソリン代だってかかります。

私は何回目かの訪問の際、彼女に聞きました。いったい、いくらくらいのお金が一ヶ月かかるのか、心配だったからです。

彼女の答えに仰天しました。

「……、えっと、コックさんに3万円、他のスタッフは全部で他に7万円、ガソリン代は10万円、食料に10万円、くらいかな……」

つまり、きちんとした会計処理をしていないのです。

ため息がでました。

彼女は気がついたら、こういうことになっていた、と言っているように、計画性があって、スポンサーがいて、この施設を運営しているわけではないのです。

彼女に、政府とか他の援助団体に援助を求めたことはないのか、と聞くと、

「私は何の資格もないのです。医療関係者でも、ソーシャルワーカーでもないの、それに、ここのいる患者さんたちは、子どもじゃないから、孤児院でもないし、医療機関じゃないからお医者さんもいないし……」

という答えです。

ところが、政府系の精神病院は、患者がホームレスだと分かると、なんと彼女のこのセンターに患者を送り込んでくるのです。

ノブシュレが寄付をどうにかつなげて生存しているこを十分承知の上で。

彼女のこのセンターの収入は、南アの政府が保証する、精神障害のある人への福祉のお金、しかも、一人月額たった1万2千円です。しかも、71名の患者さんのうち、この資格を持つ人はたったの20名ほどだそうです。ということは、彼女は現金収入としては、20万円くらいしか見込めないのです。

だからと言って、彼女はこの施設を放り投げることはできなのです。

なぜなら、彼女は、精神を患って、家族にさえも見捨てられたこの患者さんたちにとって、彼女だけが彼らのために食事を用意し、ベッドを提供し、洋服を着せてくれる人間だ、ということを誰よりも知っているからです。

これを聞いて、それでは私は何ができるのだろう、と思ってくださいますか。

私はこれから、ノブシュレをいろいろな形で支えていこうと考えています。時折いただく日本からの寄付も当面は彼女のセンターのために使わせていただきます。

皆さん、何か提案がありましたら、ぜひ、メールでも何でも、ご意見をお聞かせください。
精神病を病む患者さんたちが寒さに震えているのを見て、せめて、いまあるこの施設だけでも、彼らから取りあげられることがないよう、がんばらねば、と思います。

まず、手始めは、ノブシュレにレシートを保存して、毎月のお金の出入りをきちんと記録することからですね。いやぁ、道は険しそうです。


ホームレスの人たちのためのケアセンター
の入り口に立ってもらったノブシュレ


患者さんのベッドルーム

たった一つのテレビの前に患者さんが集まっている。

一回分のお昼のお米ができました。

ノブシュレの事務所。近所のクリニックからもらってきた
患者さんの薬が一人ひとりの名前のついたプラスティック
の容器に入れられている。



author : y-mineko
| この人のこと、あの人のこと | comments(3) |

この記事に関するコメント
初めまして。
吉村様のブログ、いつも素敵なトピックで興味深く拝見しております。

今回の記事を読んでノブシュレさんの生き方は美しいなと、素直に思いました。
日本での生活で、物質的には満たされていながら、ほかの人に対していかに無関心に生活しているかを認識しなおすきっかけになりました。

記事を読んで元気でました!周りにも還元していきたいです!
また、ノブシュレさんのやってらっしゃることについて、私も何かできることがあればお手伝いさせてください^^
アフリカは遠いですが、できることから少しずつ。。。


お忙しいとは思いますが、お体にはお気をつけて!
| nobu | 2013/08/26 8:14 PM |
こんにちは。ノブシュレさん、美しい心の持ち主ですね。個人的に、ユニセ○などの大きな組織に寄付するより、ノブシュレさんの施設のような、個人的に草の根レベルで活動しているところに寄付したいといつも思っています。なぜなら、実際に助けが必要な人たちのところに物やお金が届く前に、大きな組織では「経費」という名で、ヨーロッパから送られた担当者が立派な家に住んで最新の上級クラス4X4を乗り回せるように寄付の大部分が費やされるのを見てきたからです。私はヨーロッパに住んでいるのですが、どのようにして吉村さんを介してノブシュレさんの施設に寄付できますか?Paypalなどで寄付できるシステムが整うと、住んでいる場所に関わらず寄付がしやすくなると思います。
| Tamago | 2013/08/27 6:19 PM |
お元気ですか?大変ご無沙汰しております。
以前Cafe globeの連載中止の前にメールしたものです。
久しぶりに吉村さんの記事を読ませていただきました。
ご存知かも知れませんが、ご友人のノブシュレさんはKivaでお金を借りられないでしょうか?https://www.kiva.org/
下記はお金を借りる為のページの様です。
http://www.accionusa.org/home/small-business-loans/about-our-loans/apply-for-a-kiva-loan.aspx
KivaはOnlineでの融資のためコンピューターが必要になります。
それなのでお忙しい吉村さんのお手をわずらわすことになりますが、世界中の人からお金を送ってもらえるチャンスです!
もしご存知でもう既に申し込まれた事がある場合はごめんなさい。まだまだ世界にはマザーテレサの様な方がいるのですね。
いつも素敵な記事をありがとうございます。
胸が熱くなりました。
お忙しいと思いますが、くれぐれもお身体お大事に。
| Mayuko Bascones | 2013/08/29 2:37 AM |
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吉村 峰子
writer
English & Japanese
language instructor
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(Japanese - English)