寿BENTO、がんばってます! | 空の続きはアフリカ
<< のれん、作成中! | main | ユミコチャン、元気にしてますか? >>
寿BENTO、がんばってます!

【2010.02.03 Wednesday 13:29
 

昨年亡くなった私の母は正直な人だった。

 

もちろん、長年事業を切り盛りしていたから、お客さん用の笑顔やら、営業のためのちょっとした「嘘」は躊躇なく使っていた。

 

戦争前後の激動の東京を生き抜いた筋金入りの昭和人ゆえ。

 

でも、自分の心に正直な人だった。

そして、その自分の心にある思いのために、骨身を惜しまず働いた。

 

例えば、日本の戦争を子ども時代に体験したことから、子ども時代に本が読めないことや、お腹一杯美味しいものが食べられないことは「駄目なこと」と思い、それを口にし、それが自分の子どもたちに降りかからないよう、懸命に働いた人だった。

 

母の職業観もおもしろかった。

 

40代から父と共に経営していた企業間の宅配便会社の仕事が何よりも好きだった。その前に経営していたクシー会社は、労組関係などでかなり苦労した経験もあったので、よけいにそう思ったのかもしれない。

 

「こんないい商売は他にないような気がする。電話を受けて、運転者さんを手配して、荷物を届けてお金をいただく。分かりやすいよね」

 

そして、私のしていた、本を読み、論文を読み、それについて考え、自分の文章を書き、何もないところから教材を作り出し、先生方に講義したり、授業の指導方法を考えたり、といった「仕事」に関しては、

 

「疲れない?そんなに頭を使って。雲をつかむような仕事だねぇ」

 

と、なんとなく否定的だった。

 

私が著作を何冊か持っていても、自分たちがお金を出して欧米の大学、大学院に送ってくれたくせに、「肩書き」というものはあまり気にもかけないし、私のしていたことは、どうかもすると、「虚像」のようにも受け取っていたのかもしれない。

 

母にとってみれば、例えば、私が民間の教育団体などを主宰するよりも、もっと分かりやすく、小学校や中学校の教員になっていればまたそれはそれで評価が違ったのかもしれない。

 

でも、だからといって、私の仕事の方向転換を求めることはしなかった。

 

母はただただ単純に自分の仕事が好きで、それを“モノサシ”にしていただけのこと。

 

そして、その職業観を支えたのは、

 

「職業に貴賎なし」

 

という考え方だと思う。

 

「どんな仕事だって、みんなに必要だ。自分のできる仕事、目の前にある仕事を一生懸命して、美味しいご飯を食べて夜暖かい布団に寝られたら、こんなにいいことないじゃない!」

 

私たち三人の娘は、母のこういった職業感覚を幼いころから知らず知らずのうちに受け継いでいたのだと思う。

 

いま、南アフリカで、私は日本語、英語を教え、通訳をし、日本のメディアに原稿を書き、たまにはツアーガイドの仕事もし、と多岐に渡る仕事を抱えている。

 

そして、今年から、お弁当屋さんでの調理、接待も始まった。

 

あまり親しくない南ア人には心底びっくりされる。絶句する人もいる。

 

「えっ?あなたがテイクアウェイで調理するの?……どうして?」

 

南アの社会は、学歴やそして“人種”がその職業選択に極めて密着してくるから、私や妹のように、南ア人からすれば、日本人で、米国へ留学経験もある“高学歴”の私たちが、キッチンに立って、お弁当を販売するような仕事は、想像することさえできないらしい。

 

「ふふふ。いいでしょう?おもしろいよ!」

 

と私は答える。

 

私や妹にとって、こういった食べ物商売をすることは純粋に楽しいし、美味しいものを食べてもらって、お客さんに笑顔になってもらうのは、遣り甲斐がある。


確かに、仕込みから調理、接待、後片付けと、普段の生活とはまったく別の筋肉やら体力やらを使っての仕事はまだまだ慣れないことも多い。

 

でも、わが社のホープ、プレシャスに聞いた。

 

「あと何年で、この仕事、一人でできるようになるかな?」

 

プレシャスは「う〜ん」と考え込んだ。

 

そこで私は、

 

「よ〜し!あと2年だよ!あと2年で、お寿司も巻いて、ラーメンも作って、KOTOBUKI BENT の支店をだそう!」

 

と背中をたたいた。

 

彼女が笑顔ながらも、「え〜?たったの2年で?」と言う。

 

でも、きっと彼女なら、大丈夫だ。

 

彼女の後に続く多くの“妹”、“弟”たちのためにも、私もあと2年はお店に立つ覚悟を決めた。




ダーバンの皆様、土曜日は妹と一緒に、そして火曜日はプレシャスと一緒にお店に出ておりますので、お立ち寄りくださいね!

 

 

 

author : y-mineko
| 仕事のこと | comments(4) |

この記事に関するコメント
私の中にも、時々変な仕事観が顔を出します。額に汗してからだを使って仕事をすることが本物なような感じがしてしまい、私は私なりに一層懸命に活動しているんだけど、はたしてこれは働いているのか?なんて、なぜか思ってしまうんです。きっと「働く=大変」というイメージがあって、自分のやりたいことを仕事にしている私はからだや頭はきつくても、「大変」ってわけではなくて、それで、そんなふうに思うような感じがするんですよ。峰子さんの文章を読んで、自分の中で思っていた、このことが言葉になりました。すっきりしました。

峰子さんと妹さんのお弁当屋さんの人気メニュー、何ですか?
| 谷澤 | 2010/02/03 6:04 PM |
久美子さん、

確か、林真理子の小説の中に、「胡桃のような人生」という表現がありました。叩けば、がんがん、と音がするような確かな人生のことだったような記憶があります。

不思議なことですが、時代遅れのようですが、「ああ、いいなぁ」と思いました。

どんな仕事でも、それをしている人の背中を叩いたら、「はい、がんがん」と音がするような。

しんどいかもしれないけれど、大変かもしれないけれど、私はしっかりがんがんの道を選ぶのでしょうね。はあ〜、もっと軽やかに行きたいものだ、と思うこともあるのですがね!

ふふふ、寿BENTOはですね、毎日、日替わりで、以下の3つくらいのメニューがあります。

‘替わり弁当
メインはチキンの照り焼きやら、立田揚げ、空揚げなど
太巻き海苔巻き
中身は今のところ、照り焼きチキン、ツナマヨなど
ラーメン
醤油味、チャーシュー、メンマのせ
に萋違う味のシフォンケーキ
コーヒーマーブル、レモン、チョコレートなど


| 吉村峰子→久美子 さん、 | 2010/02/03 9:10 PM |
なんと!!!
おいしそうなメニューですねぇ!!

そして、とてもすてきなおかあさまだとおもいました。
| ぶー姉 | 2010/02/09 9:40 PM |
ぷー姉 さん、

いつでもお待ちしていますって!
母のことは、本当にいまでも信じられない思いです。

毎日、お茶を仏壇にあげて、「おばあちゃん、おはよう」と挨拶している自分が不思議です。
| 吉村峰子→ぷー姉 さん、 | 2010/02/10 9:21 PM |
コメントする










吉村 峰子
writer
English & Japanese
language instructor
interpreter
(Japanese - English)