美味しいもののこと | 空の続きはアフリカ
ホンモノ、美味しいモノ、って?

【2012.11.05 Monday 23:24

美味しいものって何だろう、と考え込んでしまいました。


私、過去40年間の自分の体重が物語るように、作ること、食べること、食べさせることが大好きです。


いつだったか見たジュリア•ロバーツ主演の映画で、映画女優を演じる彼女が、


 「年がら年中ダイエット中、だからいつでもお腹がすいているの」


 という台詞を言ったとき、心の底から、


 「ああ、そうなんだ」


と思ったし、日本の雑誌で、松田聖子さんが、とんかつが大好きだけど、年に2回くらいしか食べない、というインタビュー記事を読んだときも、


「わあ、すごい意思だなあ」


とうなだれた思いがあります。


つまり、美しく痩せている人たちは、みなさん人並み以上の努力をされている、ということなのですよね。


こういうことを知ると、よし、私も体重を落とそう!とは思うのですが、いつも24時間もたたないうちに、


「まあ、ちょっとだけいいか,今日もよく働いたし……」


となってしまうのです。


こんなことではいけない!と思いつつも、アフリカにいると周りがすごいので、ついつい甘えてしまうのです。


いいことなのか,悪いことなのか分からないのですが,日本では百貫デブと言われても仕方のない私が,アフリカではまったく普通サイズなのです。


私が体重を落とさねば、とつぶやくと、


「どこを?」


なあんて、かわいらしいことを多くの人が言ってくれるわけです。


でも、日本の小柄な女性の中に入ると、ああ、なんて巨大な私、と反省するのです。


私がアフリカを永住の地に選んだのも、結構、こういったことが頭の奥になかったのか,と言われると、ううん、一挙に否定はできないような……。


さて、情けない体重の話はさておき、今日の本題の美味しいもののことに話を戻しましょう。


こんなことを思ったのも、実はさきほどちょっとのぞいた Facebook で、ある人が、お母様の作ったドーナツがどんなお店のドーナツよりもおいしい、と書かれていたのです。


私たちがエチオピアに住んでいた時、日本人家族の中にちょうど年齢の近い子どもたちが何人かいました。


その子どもたちを可愛がってくださる人たちの中に、結婚したばかりのカップルがいました。


そのお二人がバンコックだったか、シンガポールだったか,出張に出られた際、そのお土産に、先進国のドーナツチェーン店からのドーナツを買ってきてくださったのです。


そのとき、彼らが、満面の笑顔でこう言ったのです。


「みんな!ほんもののドーナツだよ!」


そのとき、私はとっても複雑な気持ちになりました。


「えっ?じゃあ、このいつも食べているエチオピアのドーナッツはほんものじゃないってこと?うううう〜ん?」


この若い二人に何の悪意も他意もないことが明白だっただけに言葉を無くしました。

 

実は、小麦粉を卵とお砂糖で練って、油で揚げる、という形のおやつは、エチオピアでも、マラウィでも、そしてこの南アフリカでもよく見かける定番のおやつであり軽食です。


話はそれますが、南ア•ダーバンのこの辺りでは、その揚げたての甘くないドーナツにポロニーという魚肉ソーセージのようなハムを一枚挟んで、昼食にします。なんとこれ名前までついていて、“ズルー(南アの最大黒人部族の名前)バーガーといいます。これは結構ボリューム満点で、一個食べれば結構な栄養補給となるのでしょう。お値段はサイズにもよりますが,ポロニー付きで約25円くらいです。


さて、エチオピアのドーナッツに話を戻しましょう。エチオピアではこのドーナッツの多くは道ばたのドーナツ屋さんで揚げたてのものが買えました。我が家の子どもたちは、このエチオピアドーナツが大好きで、友達の家に遊びに行くときによくこれをねだりました。


アディスアババの町中で、生ものの買い食いはちょっと衛生面が心配でしたが、高温で揚げたてのドーナツは美味しくて、子どもたちとその素朴な味を楽しみました、


なので、彼らの“本物のドーナッツ”定義に納得することができなかったのです。


美味しいものって、本当に個人的な思いが強いのですよね。


さて、こんなことを書いてきたら、いま、南アで日本のどんな味が恋しいかな、と考えてしまいました。


食い意地の張っている性格ゆえ、アフリカのどんな土地でも、圧力鍋で美味しい日本のお米を炊き、お醤油とお味噌をなんとか調達して、日本の家庭料理を作ってきました。 


ここダーバンでは、種類さえ少ないものの、かなり程度のよいお刺身も入手できるので、食生活に関してはそう不自由はしていません。もちろん,日本のラーメンや美味しい薄切りのお肉などは恋しいのですが……。


でも、ありました!幻の恋しい食べ物が!それも、高校生のときに、つくづく「美味しい」と思っていて、いまではもう食べられないであろう食べ物が。


大昔、私が卒業した高校は東京の西、立川にありました。立川駅に出るためには繁華街を毎日通っていたわけです。そんなにお小遣いがあったわけではないので、そんなに高いものでもないのです。


それは、今は影も形も変わってしまった、以前の高島屋デパートの地下一階にあった、焼きそば屋さんのもやしやきそばです。


そのお店は立ち食い!のお店で、職人さんとしかよべない何人かのおじさんたちが、毎日、毎日、このもやし焼きそばを作っていたのです。


細切れのお肉なんか、ほんの少ししか入っていなかったと思います。でも、たっぷりのもやしと麺、その上にかかっていた茶色の特別なソース。


いまでもあの味が舌に甦ります。世界の美味しいものをいろいろ食べてきましたが、あの焼きそばの味は、かなりのものだった、と自信を持っています。


ああ!食べたい!


でもね、あの場所にあった高島屋さんはもっと奥の方に移転してしまったし、しかも、これ、私の高校時代の話なので、な、なんと、1970年代のお話です!げげげ、ということは、40年近く前のこと?そんな馬鹿な!いつの間に私たちこんな年齢になってしまったんだか……。


今年の暮れ、日本に一時帰国しますが、あの味には巡り会えないでしょうね。


でも、こんな味を思い出したのも,今年に入ってからFacebookでつながった昔の同級生たちのおかげかもしれないですね。みんなありがとう!今年はその何人かに会えると嬉しいな、と思っています。

 

 

author : y-mineko
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七面鳥をローストすると

【2009.12.28 Monday 01:00
クリスマスや人の集まりに、大きな七面鳥をローストするようになって何年が経つのだろう。

いまからほぼ30年(!)前、ニューヨークの大学院生用の寮では、オーブンを1時間以上ちんちんに熱くしてからオモムロに……。これはゴキブリが徘徊するキッチンの中にあるオーブンを“浄化”するための苦肉の策だった。クリスマスの寮に残っていたのは、家が海をいくつも越えるところにあるような数人で、お国料理を持ち合って、メインの七面鳥をいただいた。

冬の駒ヶ根や東京でも、4キロくらいの大きさの七面鳥はなんとか、この時期に入手することができた。確か、1キロ1000円くらいだったと思う。肉類が何でも高い日本でこの値段は嬉しかった。だって、4キロの七面鳥は何人ものゲストへのとっても立派なご馳走になったから。英語の生徒さんたちの家族と一緒にクリスマスを楽しんだ。

そして、雪が舞うようなクリスマスの気候ではなかったけれど、リベリアやエチオピア、はたまたマラウィでも、何とか人の伝手を頼って、このじっくり扱えばなんとも優しい味を提供してくれる鳥をローストしてきた。

私の七面鳥のローストの仕方はとっても簡単。若いころはお腹にいろいろな詰め物も試したが、我が家ではどう味を工夫しても、この詰め物に人気が集まらない。そこで、もうここ数年、何も詰めないでそのままオーブンに入れてあっさりとした簡単ローストを作ることに決め込んでいる。

七面鳥、4キロ程度の大きさで、ローストにかかる時間は約3時間。175度くらいの低めのオーブンでゆっくり、ゆっくりローストしていく。ローストには、ローズマリーの香りが大好きな私は、味よりも何よりも、七面鳥をローストしている間にキッチンに漂う香りに幸せを感じてしまう。

オーブンに入れる前の七面鳥。姪のリナです

オーブンに入る前の七面鳥です。持っているのは姪のリナ。

我が家では、七面鳥の付け合わせもいつも決まっている。

サツマイモとリンゴの煮物(定番です)、
サラダ2〜3種類(豆類を忘れずに)、
日本のご飯(これは欠かせず。私のグレービーにはお醤油が隠し味で入るため、ご飯との相性が抜群なのだ)、
スキャロップト・ポテト(ジャガイモのグラタン)。

家族以外のお客さんを招くときは、これ以外に、コロッケや海老フライなどの揚げ物やエビのサラダを作るときもあるし、サーモンのパティが登場することもある。

七面鳥、サツマイモ、サラダ二種

付け合わせもできましたよ〜

さて、今年のクリスマスはとっても少人数でゆっくり過ごしている。夫と娘は日本だし、妹も仕事の関係で、彼女の二人の子どもを残してこれまた日本。だから、息子、カンジ、甥のアジーノ、姪のリナの四人でのクリスマス・ディナー。

今年は少人数のクリスマスでした。

ただ、正直に告白すると、ここダーバンに住み始めてからはクリスマスを積極的に祝うことを躊躇している。私はクリスチャンの友人がたくさんいるから、彼らの家に招かれて、クリスマスを祝うことはまったく問題ないのだが、自宅では、なんとなく、なんとなく、クリスマスツリーなどを飾り付けるのも申しわけないような気がして、遠慮している。

日本にいるときは、子どもと一緒にツリーに電飾を飾った年もあった。

でも、イスラム教や、ヒンズー教を信心する人々もとっても多いダーバンで、クリスチャンでもない私が、クリスマスをお祝いするのは、ちょっと違うような気がしてしまうのだ。

ただ、クリスマスの「分かち合い」の精神は大いに好きだから、この時期、お財布からお金が羽をつけたように飛んでいく。我が家で働いてくれているスタッフには、一か月分のお給料はもちろんのこと、駐車場のお兄さんにもいつもの数倍のチップとか、ごみ収集のトラックのスタッフとか新聞配達人たちにも、「クリスマス、お願いします」と請われるので、この時期ばかりは、はいはい、と心付けをはずむ。

外国に住んでいると、やはり祖国のアイデンティティを感じざるを得ない時がある。私にとってそれは、やはりお正月。南アには、特に新年を日本のように祝ったりはしない。だからこそ、我が家の子どもたちにはお正月の雰囲気を伝えたい。

クリスマスは遠慮したけれど、暮も押し詰まった大晦日には、お正月用にダーバンに残った日本人の友人たちを集めて、お餅つきをすることが恒例の行事になりつつある。 実は、NHK の衛星放送が入る我が家には、暮の31日に、紅白歌合戦を見るために人が集まってくるのだ。

ダーバンにいる日本人の方々、我が家で31日にお餅つきをしますよ。南アと日本の時差は7時間なので、お餅つきをしながら、紅白歌合戦も昼間に見られますから、どうぞ、遊びに来てくださいね。誰でも大歓迎ですよ。お待ちしていま〜す!

author : y-mineko
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吉村 峰子
writer
English & Japanese
language instructor
interpreter
(Japanese - English)